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【小説】BUTTER | 柚木麻子

この本を読もうと思った理由。裏表紙の内容に惹かれたのもあるのですが、それより何よりもタイトルとイラストが大きかった。バター。何を隠そう(隠してない)、私がこの世でいちばん好きな食べ物のひとつがバター醤油ご飯なのです。この世でいちばん好きな食べ物って私にとってはたくさんあるんですけどね。いちばんofいちばんは生レバーです。もう日本では食べられませんね・・・。話それました。スゴイ理由を期待した皆さん、すみません。それでは本日の内容がこちらです。

あらすじ

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子。若く美しくもない彼女がなぜー。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言を元に梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳にあることを命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。

柚木麻子「BUTTER」新潮文庫 裏表紙より

皆さんご存知かもしれませんが、これは実際にあった殺人事件がモデルとなった小説です。本の内容は殺人事件とは遠ざかり現代女子の苦悩と活躍を描いています。男性だけでなく女性をも引き込んでしまう梶井真奈子の魅力とは一体何なのか。

感想 ※ネタバレ注意

自分が「女」であることを思いっきり突きつけられたような気がしました。容姿のこと、社会的な役割のこと。現代に生きる女性について考えさせ、そして背中を押してくれる、そんな小説でした。個人的には「何やこの女!」と終始梶井にイライラしてましたがその理由は明確です。以下本文からの抜粋。皆さん、私がダイエットについてブログを書いていることも念頭に置いてください。

ダイエットほど無意味でくだらなく、知性とかけはなれた行為はありません

く、くそ〜〜〜!!!でも本当は自分だって体型のことなんか気にしたくない。でも気になっちゃうんだもん!!!見た目スッキリの方が絶対印象良いでしょ!!!

あなた一体、何のために痩せるんですか。男性の目を気にして?それなら心配ないわ。男性は本来、ふくよかで豊満な女性が好きです。男性と言っても精神的に大人です裕福でゆとりのある本物の男性という意味ですが。痩せた子供のような体型の女性が好きだという男性は自分に自信がなく、例外なく卑屈で、性的にも精神的にも成熟しておらず、金銭面でも余裕がない方が多いんです

煩い!そんなもん全男性に当てはまるんですか?本物の男性って何やねん!金持ちとモデルさんとか女優さんってよくある組み合わせやろ!大体こっちは男だけを気にして生きとるわけやないんじゃー!!!

とまあこんな感じで梶井と私の押し問答がずっと続いていくわけです。でもこれ何で腹立つかって、実際に私が梶井のことを羨ましいと思っているからなんです。梶井の言葉にもあるのですが、そもそも何のために痩せるの?病気のリスクが減るとか、服が綺麗に着れるとか・・・これってとってつけたような理由だってことに気づいてしまったのです。個人の意見ですが、私がたどり着いた結論はこちら。「現代社会では痩せているのが良しとされる風潮があるから」これにつきるのではないかなと。だってきっとみんながもっと太ってて、痩せたらダメだと社会で言われ続けたらきっとそんなに気にしないと思うんです。「ほら、流されているだけでしょ」とカジマナに言われている気がしてモヤモヤしていました。

主人公の里佳はそんな梶井の言動に触れるたびに変化していきます。欲望に忠実に、美味しいものを食べて太ります。どの世代だろうが性別だろうが大変なことはもちろんあると思うけれど、現代女性って、仕事とか結婚とか出産とか、世間が作る理想像の中でたくさんの制限を受けていると思います。そんな中で「欲望に忠実に」なんて言われたら、そしてそれを1回覚えてしまったら、きっととっても開放的な気持ちになるはず。初めはイライラしていた私も、だんだん里佳と同じ気持ちになっていきました。自分の考えをハッキリ言い切ることが出来てしまう梶井にかっこよさなんて覚えてしまったりもします。しかし、取材を続けていく中で里佳自身の気持ちは最終的にこのように変化します。

この半年間、何故こんなにもこの女に惹かれ、振り回されたのか。ふと、全てが作り事に思えてきた。この人はしたいことも、言いたいことも、ひょっとすると何もないのかもしれない。ただ、その場をしのいでいるうちに、本人の意志とは関係なく、ここに流れ着いただけなのかもしれない。自分では何も決定せず、世間一般で良いとされる価値観に手を伸ばしてきただけなのではないか。その証拠に、彼女が求めてきたものは、すべて高い値段がつけられている。

結局梶井も里佳と同じように、自分が良いと思っているものを選んできただけだということに気づきます。私もこの段階において、ダイエットとか社会的役割とか流されているとかみんなと一緒とか、そんなことどうでも良くて、自分が好きなことを優先させる気持ちが何よりも大切で、何故大切かなんて理由は必要ないと思えたのです。

まとめ

正直心をかき乱されました。でも、この小説を読む時間がそのまま自分と向き合う貴重な時間になりました。ヘビーだなあと思いながら読み進めていたけれど、里佳と一緒に最後にはスッキリできる、とっても濃厚だけど後味は爽やかなエシレバターみたいな小説でした。言うまでもなく食べ物の描写は素晴らしく、これを描きながらバター醤油ご飯を食べようと決意しているところです。ヒステリックにダイエットダイエットと言わずに(苦笑)、自分が好きでいられる自分でいるための生活を心がけようと思います。もちろんそんな気分にはなれない時もあるだろうけど、それも愛すべき自分ですよね。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。

おわり。